またレンズを買ってしまいましたとさ...というか、アダプタをオクで落としたらオマケみたいな形でついてきたものなんだけれど。
そのアダプタは『ティルト・アダプタ』。何をするものかといえばレンズをtilt、つまり傾けるもの。当然傾く方向は縦・横だけでなく何方向か任意方向に変えられる。何に使うものかというと、一般的にはミニチュア写真を撮るためと考えられているけど、本来は奥行きのある被写体で手前から奥までピントを合わせたりするために使う。似たものでシフトアダプタは建物などを撮ったときに歪が出るのを補正したり、といった用途となる。(9/27訂正)
国産だとすっごく高くて、10数万円はする。ところがロシア製(メーカーはウクライナ?)だと送料入れても2万円ちょっと。無事に届くかどうかは運次第...レンズだと結構いい加減なディーラーもあるらしいので、ロシアンレンズ購入はロシアンルーレットに例えられる。さすがにちょっと踏み込むのは躊躇していた世界だった。
とろが今回、オークションで「故障しているジャンク品」とのことで出品されたこのブツは、なんとアダプタからレンズが取れなくなってしまい、しかもレンズが壊れているため返品できないので処分するという。終了まで日数があったが、高くなかったので落札価格でゲット。
なかなか正直な方で取り引きはスムーズに完了。さて届いたブツを見てビックリ。ピントリングも絞りリングもガッチリ固まってびくともしない。アダプタはペンタコンシックスマウントということでスピゴット式。バヨネット式ではないので固定用のリングがアダプタ側にあるのだが、これまたガッチリ固まって微動だにしない。
楽しくなってきた~と工具を並べ、端から順にバラしていった。
カメラ側のマウントはニコンFマウント。フランジバックはソニー/ミノルタMAマウントより長く、内径も少し小さい。うまく改造できればソニーαに取り付けられると踏んでの落札だった。ティルトアダプタがほとんどバラバラになったあたりでスピゴットのリングが緩んだ。おー、取れたよ!これがペンタコンシックスマウントか~
平行していろいろ調べていたら、このレンズはキエフ60用のMIR-38Bという3.5/65mmで、はまったら取れなくなることがあるものらしい。大当たりだ。いろいろ見ていると、アダプタの各部で使われているネジのしめ加減で微妙な力がかかり、取れにくくなるようだった。実はこれが後でMAマウント化するときに苦労する原因となるわけだが、このときはまだ気がつかなかった。
続いてレンズ側のマウントを外し、ピントリングと絞りの具合を見る。なんか割れたプラスチックのパーツやらネジやらボールやらがポロポロと...ボール8つ!?何のボールだろ。ラッチ用にしては小さいしやけに数が多い。1個だけ大きいし。
さて開けてみたところがこれ。絞りを動かすレバーが曲がり、絞り羽根のパーツもひん曲がっている。何よりピントリングと連動して前玉が動くのを固定する爪はひしゃげてしまってネジの頭が飛んでいる。あちゃー、外れないので無理やりこじったか。いくらロシアンレンズでも最初からこんな状態で売ってるわけないから、元のオーナーかも。
ひとつずつパーツをアルコールで洗浄し、曲がったものは伸ばし、飛んだネジは同じようなものを探し、少しずつ組みあがっていった。絞りは元のリンケージの状態が分からないので、パズルを解いているような感じでかなり苦労したが、スプリングを留めるネジの位置が間違っていることに気がつき、なんとか絞りリングと連動させることに成功。ただ、なぜかピントリングを無限あたりに持って行くと絞りがきかなくなるというあたり、元々ハズレだったのかも知れない。恐るべし、ロシア玉。
さあ、続いてニコンFマウントからソニー/ミノルタMAマウントへの改造。これは単純にジャンクレンズのマウントを外して載せかえるだけなのだが、当然すんなり入るわけではない。しかもアダプタのパーツと一体化しているため、バヨネットの爪を削って、表面を削って、とかなりの大手術となった。
このへんあまり詳しくないのだが、各パーツのサイズを測ってみたところ、Fマウントのフランジバックが合っていないのではないかという気がする。P6マウントは74.1mm、Fマウントは46.5mm。差し引き27.6mmあればいいはずのアダプタの厚みが30.4mmもある。MAマウントは44.5mmなので、差し引き2mmMAマウントのパーツをかさ上げすればいいはずだけれど、元々高すぎるのではないか?うーん。
とりあえず手持ちのシグマAPO ZOOM 75-300mmをバラしたところ、こいつのマウントが一番ぶ厚かった(3mmもあった)のでこれを使うことにした。完動品だったのだが売ったところで1,000円もしないのでパーツ代としては安い。
多少の紆余曲折の後、無事取り付いた状態がこれ。アダプタ側のFマウントは原型をとどめないところまで削った。MAマウントの裏側もちょっと削っている。これらは全部フライス盤を使ったのであっという間に削れてしまうが、真鍮の削りクズって固くて細くてよく刺さるんだ、これが。
まだそれらしい写真を撮るに至っていないので、作例はまた後ほどだが、ご覧のとおりソニーαにティルトレンズ、しかも6x6版用、しかもロシア玉、というところが泣けると思う...
こんにちはー、と上下に最大8度。
あっち向いてホイ!と水平に最大8度。