賛美: 2007年5月アーカイブ

海外曲の翻訳と著作権の遵守。これは賛美曲の場合どうしても避けられない問題だろう。しかし以下のケースをこのブログを読んでおられる諸氏はどのように受け止められるだろうか?


楽譜つき自主制作CD

ある教会のホームページからオリジナル賛美CDを3枚注文した。届いたのは自主制作風のジャケットで、ひとつは紙ジャケ、あとの2つは薄型のプラケースにライナーのみという仕様。

楽譜つきというので期待したのだが正直がっかりだった。これが単にコピーをホッチキスで止めただけのものなのだ。しかも作者不明、訳者不明、著作権の所在がはっきりしないものがほとんど。さらに、明らかに他の曲集からコピーしたとおぼしきページもあった。

完全にオリジナルの楽曲についてはもちろん問題なしだが、いくつかの曲はきき覚えがあるので海外曲だと分かる...しかし原曲の作者についても、版権を持っているはずの出版社やレーベルのコピーライト表記がまったくない。いいのか?教会なら許されるのか?まさか外人牧師なのでOKってことないと思うんだが。


私と賛美曲の翻訳

私が海外曲の翻訳を始めたのは89年ごろだろうか。現在の妻に誘われ、教会の礼拝へ出るようになって、いろいろな賛美曲があることを知った。ミクタムなどの賛美曲集を見ると、すでに何人もの方が、ほとんど牧師らしかったが、訳者として載っていた。

翻訳曲というジャンルがあるわけではないが、どれもすばらしい楽曲だった。まあたまにはいかにも訳しました、みたいなのもあったがほとんどは違和感がなかった。

そして実家の近くにある同じ教団の教会におじゃました時。こんなのがあるんだよ、とアメリカのインテグリッティーズ・ホザナの『Praise & Worship』シリーズを紹介された。大阪へ帰って、さっそく梅田のキリスト教書店へ行くと、楽譜集があったのでとりあえず全部買った。

音源全部を揃えることは難しかったが、それでもけっこう集まった。当時の主管牧師、川上先生もお好きだったそうで意外と教会にあったのだ。

そして気に入った曲に日本語で歌詞をつけていくようになった。私は決して英語が得意というわけではなかったが、美しいメロディーに日本語を載せるのは楽しかった。作曲はむしろ苦手で、中3のとき以来まったく作品がないのだが、訳詞というか作詞はスムーズにできた。

世間に発表しようとか、CDを出そうとか全く考えなかったため、他人が聞く機会はほとんどなかったが、原作者には最大の敬意を払い手書きの楽譜にもちゃんと作者名とコピーライト表記は入れていた。


「み前にひざまずき」からヒルソングへ

あるとき、教団で賛美CDを出す企画が持ち上がり、私が訳をつけた曲が採用されたと聞いた。Don Moenが歌っていた"I Bow My Knee"を『み前にひざまずき』と題して訳をつけたのだが、けっこうあちらこちらの教会で歌われたようだ。当然コピーライト表示は全曲についている。

やがて世はヒルソングブーム(?)となった。それまでにない力強さと深い信仰心にあふれる歌詞にたちまち魅了された。私は99年夏、日本最初のヒルソングツアー(と聞いたよ)に参加。当時はまだ「ヒルズ・コミュニティ・チャーチ」といって教会のホールでカンファレンスが開かれていたが、あふれんばかりの人と熱気あふれる賛美に圧倒された。

その夜、ホテルへ帰るとさっそく買い込んできた楽譜を開いた。カセットしか持ち合わせていなかったので昼間に聞いたメロディーを思い出しながら歌詞を見ていると、口からは日本語がこぼれてきた。日本から五線紙は持参していたので、書きとめてみた。5分もかからず一曲完成してしまった。

他にも何曲か歌詞がついたので、せっかくだから手書きでゴメンけど、とツアーのメンバーにコピーを渡した。それがどこかをめぐっていったのか、今度はミクタムから連絡があった。そのうちの一曲を新アルバムに入れたいのだが、と。

残念ながら一部歌詞表現を変えるということだったが、これは深く考えずにただ書き留めただけだったので仕方ないかと思った。何よりこの曲が日本の教会で歌われることがうれしかった。こうして"What The Lord Has Done In Me"は『よみがえりの主』としてミクタムの賛美CD新シリーズに収められた。

実はヒルソングの翻訳はほかにもたくさんあり、ヒルソング以外もたくさんある。やりかけたままで終わったものもある。ヒルソング関係は周囲にすすめられてヒルソングの出版部に公認日本語訳としての登録申請を出してみた。別にCD化するとか関係なく、ちゃんと許可を取りたいということだった。返事が来なかったので結局どうなったのか分からない。(その辺がオージーらしいというか...)


二度目のカンファレンス参加

二度目は2001年だった。そのとき日本語歌詞があるというので注文してみたら、自分の名前が書いてあったのでとりあえず申請は受理されたみたいだ。しかし歌詞は別のものだった...(やれやれ)

その前後で聞いたのだがどうやら公認日本語歌詞は同じ教団の東京シティチャーチのみが出す、ということになったらしい。要するに勝手訳が横行して困るということらしいと聞いた。がんばってCDを出し続けているけど、もっと他の曲でいいのがあるのになあ、あの曲は入れないの?と思うと残念。

個人的には"Simply Worship"シリーズとか、初期の頃のRussell Fragar大先生(向こうで本人に会ったのだ)のお書きになった(笑)曲が好きだ。最近のユース上がりのメンバーが書いた曲ってループくさいというか単調で...年齢的にも無理があるし(涙)


守るべきものは何?

長くなったが、私が言いたいのは翻訳だって歌詞を天から賜ることがあるわけですよ。っていうかインスピレーション?それが訳者が違えば何パターンもあるのは別にいいんじゃないの、と。賛美とは出版してナンボではなくて、捧げてナンボだと思うわけです。それを止める権利はないと思う。ただし最初に曲を作った人の権利は最大限に守られなければならないから、その人の名前を残すことは必要最低限のルールではないかと。

その上でその人が「これはイヤだ」というならボツにするのはやむなしだと思う。中には翻訳から離れて勝手に歌詞を付け足すわメロディーまで変えるわ、ぜんぜん別の曲になってしまっているケースもある。アレンジではなくもはや単なるパクリ。それで原曲より良くなっているならまあ許すけど...

私が歌詞の翻訳でなるべく気をつけていること。「日本語として美しいか」ということ。最近のSMAP?の曲で「ありがとう~ありがとう~」という歌詞があるが、イントネーションが変だろ!それ。アクセントがずれているのも気にかかる。音楽の場合、強拍と弱拍があり、アクセントが弱拍にきた日にゃ意味が変わる場合だってある。

時代とともに日本語も変になっているから、気にしない人がいたって不思議ではないんだけど...なんかボヤキが多くなってきたのでおしまい。


次回はこの辺について書こうか。

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